同盟歌壇 碓田のぼる選
新潟県 加茂川ハル子
午後の五時ナースセンターあわただし片隅で聞く癌の告知を
静岡県 江川 佐一
次号から高沢義人の歌なきか一月二十八目の訃報切り抜く
新潟県 柳川 月
卒寿までよくぞ生きたと冬将軍祝いくるるか大雪降らす
兵庫県 岸本 守
民主主義求める民に追い込まれバラク辞任す狂喜の市民
東京都 若林義文
反戦を決めし松井田駅に立ち六十六年をふりかえり見つ
福井県 元山章一郎
節分の豆を噛みしめカとす閉塞破る春のたたかい
鳥取県 大久保禮吉
危篤とて母の枕辺に馳せたれば骸(むくろ)に残れる仄(ほの)かな温もり
東京都 鈴木すみ江
悉皆がおごそかに見ゆここ印度山川草木虫魚禽獣艦褄の人
大分県 渡辺幹生
大分に治維法と闘いし先達あり二月百歳となりて矍鑠(かくしやく)
和歌山県 中平喜祥
夜になれば大阪の街も変わりなし踏切があり遮断機が開く
《選のあとに》
「年年歳歳(ねんねんさいさい)花相(はなあい)似(に)たり、歳歳年年人同じからず」。これは初唐の詩人劉希夷(りゅうきい)という人の詩の一節。毎年花は同じように咲くが、眺める人の姿は同じではないということ。にもかかわらず、変わることなく歌は作り続けるてゆきたいもの。
(高沢義人さんは1月28日逝去されました。謹んでお悔やみ申し上げます。)
不屈 中央版 №441 5面 2011年3月15日(毎月15目発行)