はじめに
”時効不適用条約”取り組みの経過
わが同盟が最初に”時効不適用条約”を紹介したのは、1981年5月15日発行の機関紙「不屈」87号でした。そして、同年7月12日に行われた第13回定期大会で、「国連の戦争犯罪及び人道に反する罪に対する時効不適用に関する条約」の速やかなる批准を求める特別決議が行われています。
また、1983年5月14日、第15回定期大会で同盟規約が改正され、「天皇制国家とその指導者の戦争犯罪を徹底的に追及し、それらの影響力を一掃すること」を同盟目的のひとつとしました。
それ以来、”時効不適用条約”の批准というスローガンをかかげてきました。
1986年1月15日の中央幹事会で、この”条約批准”のスローガンを運動化へという提起が行われました。常任中央幹事会は、ただちに”不適用条約”についての全面的研究にとりかかり、内部に研究会を組織しました。
この研究会は、ニュルンベルク裁判40周年国際会議に参加された根本孔衛氏らの参加のもとで、”条約”の基本となったニュルンベルク裁判所規約などを詳細に解明しました。このなかで、わが同盟が一貫して追求している国家賠償要求と”条約”批准の接点なども、国際法の立場からも研究が深められました。
そして「不屈」150号記念として”時効不適用条約”について特集を行い、”条約”と、わが同盟の独自要求である国賠要求についての国際的視野にもとづく位置づけとわれわれの役割の理解を深め、この運動をいっそう発展させるとともに、”条約”批准を推進することの重要性を訴えました。
今年1月15日の中央幹事会で、”時効不適用条約”の特別報告を桑原英武副会長が行い、運動化への確信と、わが同盟として慎重で効果的な手順をふみ、国民運動化へ向かって一歩をふみだすべきだいう意見の一致をみました。
その後、常幹会議で”条約”研究会を”条約”問題他作委員会に改組しました。手はじめに、わが同盟員の”条約”に対する理解を深めるために、討議資料として1月15日の桑原副会長の時別報告に加筆してもらい、諸資料を付録したのが、この「戦争犯罪と人道に反する罪に時効はない」のパンフレットです。
国賠要求運動と”条約”批准運動の接点
わが同盟の国賠要求は、署名がはじめられてかた14回の国会請願となりました。今年は目標の16万署名を突破し、他の平和・民主主義の闘いとともに、中曽根自民党内閣の「戦後政治の総決算」路線に痛打を与えたものと確信します。
わが同盟に国賠要求運動は、天皇制権力が犯した戦争犯罪と人道に反する犯罪を、生きている犠牲者として、要求実現の日までくりかえし闘い続ける鋭い民主主義の闘いです。その過程で、この権力犯罪が、直接の治安維持法等の犠牲者だけでなく、これによって無数の国民をがんじがらめにし、貧困・無権利、そして侵略戦争の惨禍にひきずりこんだ歴史的事実を広範な人びとに宣伝し、このような犯罪防止の正義の闘いに参加されるよう呼びかけているものです。
ここで重要なことは、われわれは天皇制権力が犯した侵略戦争と人道に反する罪に対して時効なく鋭く追及していること、これはまさに”時効不適用条約”と同じ立場であり、われわれが進めている闘いが国際的な人道と正義の闘いの一翼であるということです。
したがって、この”条約”批准の国民運動が組織され、運動が進むことは、わが同盟の国賠要求運動の発展にとっても極めて有利となり、互いに相乗効果をもたらすことでしょう。
この討議資料で、国賠と”条約”の関連性、相互性を深く学び、両者の運動の発展のために意思統一をはかる一助としたいと念願しています。
1985年5月
治安維持法犠牲者国家賠償要求同盟常任中央幹事会
”時効不適用条約”問題対策委員会
パンフレット 「なぜ、いま 時効不適用条約か
戦争犯罪と人道に反する罪に時効はない」から